「おいしい信州ふーど」レポート

伝統食の「おしぼりうどん」。食べてみないと分からない「あまもっくら」とした味

坂城町周辺に伝わる「おしぼりうどん」は、うどんをねずみ大根のおろし汁に付けて食べる郷土料理。おろし汁をふきんやガーゼで絞ることから名前が付けられたと言います。みそやかつおぶし、ネギなどの薬味を好みで入れたおろし汁は、辛さの奥にほのかな甘みも。これが、「あまもっくら」と言われる味です。びんぐしの里公園内にある「びんぐし亭」の「おしぼりうどん」は手打ち麺。同町にある老舗・新田醸造のみそにかつおぶしを混ぜたものとネギを添え、付け合わせにはねずみ大根の切り干し煮も提供しています。運営する「味ロッジ」の社長・矢幡和香子さんは「ねずみ大根の辛さ、『あまもっくら』は言葉で説明するのが難しくて。これはもう、食べてもらうしかないですね」と笑顔を見せます。

びんぐし亭
店内にはねずみ大根の加工品や地場産品、ねずこんグッズも並ぶ

同社は、地元農家の奥さんたちが集まって、出荷できない規格外の農産物を使った商品を作ろうと立ち上げた組合がルーツ。2013(平成25)年に法人化し、現在は同公園内にある加工所で、ねずみ大根をはじめ、地元の野菜や果物を用いた加工品を製造しています。辛味だけではなく、水分が少なく、歯応えがあるというのもねずみ大根の特徴。「見た目は普通の大根と変わらないですが、食感が違って、サクサクしています」と矢幡さん。千切りにして煮たものを具にしたおやきは、地元小中学校の給食でも人気だそうです。葉も、おやきにしたり、焼き菓子の生地に混ぜ込んだりして、余すところなく活用。漬物にした葉のソースも開発中です。

びんぐしの里公園内にある加工所

矢幡さんは2年前、ねずみ大根振興協議会の会長に就任。「喜んで食べてくれる人を見ることが、生産者にとっても加工者にとっても一番の励みになります。そのためにも、まずは知ってもらうことが第一歩」と話します。マスコットキャラクターの「ねずこん」と一緒に、PR活動にも力を入れたいと意気込みます。「ねずみ大根がもっと広まれば、町全体の活性化にもつながるはず。たかが大根、されど大根。まだまだ可能性はあると感じています」。

味ロッジ(株)社長・矢幡和香子さん

坂城町ねずみ大根振興協議会
URL:https://nezumi-daikon.com/

びんぐし亭
TEL:0268-82-0567
住所:埴科郡坂城町網掛2020


⇒ 信州の伝統野菜「ねずみ大根」(「おいしい信州ふーど」図鑑)

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