「おいしい信州ふーど」レポート

小諸・菱野地区の土壌と気候が育む「ひしの南蛮」

ピーマンのような、緑色でコロンとした丸い形が愛らしい「ひしの南蛮」。標高800~1000メートルの高地、小諸市菱野地区で生産されています。この地でつくられるようになったのは、1943(昭和18)年ごろ。戦争帰国者が朝鮮半島から持ち込んだ種子を栽培したことが始まりと言われています。

高峯山を望む高地にある原田さんの畑

長い間、正式な名称はなく、地域の人たちは「南蛮」と呼んでいたそう。2008(平成20)年、上田市と軽井沢町を結ぶ「浅間サンライン」沿いに「眺望一番ひしの直売所」がオープンしたのを機に着目され、地域名を冠した名前が付きました。その翌年には、信州の伝統野菜に認定。菱平地区農産物出荷施設利用組合の組合長・原田義政さんは「新聞やテレビで取り上げられたこともあって、地域でも認知度が上がりました」と話します。

眺望一番ひしの直売所

種もヘタも丸ごと食べられるのが特徴。収穫時期は7月初め~10月下旬ですが、季節が進むにつれて、形が変わり、辛さが増します。「種がないものが辛いが、割ってみないと分からない」と原田さん。…ということは、食べてみるまでどのくらい辛いかは分からないというわけですが、夏に収穫したものは、辛さはほとんどなく、柔らかいとのこと。切らずにそのまま鍋で炒めて砂糖としょう油で味付けして食べるのが一般的だそうですが、原田さんのおすすめはそのままの味が楽しめる素揚げ。割れないようにつまようじなどでちょっと穴を空けておくのがポイントです。

以前、原田さんは坂城町や新潟県に住んでいる兄弟に苗を分けたことがあるそうですが、良いものは採れなかったとのこと。ひしの南蛮はナス科トウガラシ属。ピーマン、パプリカ、唐辛子などトウガラシ属の栽培は暖かい気候のほうが適しているのですが、ひしの南蛮には、菱野地区の土壌と気候が不可欠なのかもしれません。現在、組合に加盟している57人のうち、ひしの南蛮を生産・出荷しているのは13人。加盟者は2008年に立ち上げた当時と比べると半分ほどに減少しています。「今後は、残そうと思ってくれる人、興味を持ってくれる人を増やしていかないといけないですね」

菱平地区農産物出荷施設利用組合 組合長 原田義政さん

眺望一番 ひしの直売所
TEL:0267-22-1451
住所:小諸市菱平312
営業:8:00~17:00(5月〜12月)


⇒ 信州の伝統野菜「ひしの南蛮」(「おいしい信州ふーど」図鑑)

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