「おいしい信州ふーど」レポート

奥深く、素晴らしいすんき。食べ方のバリエーションを増やして、多くの人に

木曽地方で古くから伝わる「すんき」は、赤かぶの葉を、塩は使わずに複数の乳酸菌で発酵させた漬物です。県の「味の文化財」やイタリアに本部がある「インターナショナルスローフード協会」による「味の箱舟」に認定されているほか、2017(平成29)年には、国内外でも稀有な無塩の乳酸発酵食品として、地域の特産品をブランドとして保護する「地理的表示(GI)保護制度」に登録されました。

木曽町・新開にある「アルプス物産」は併設する工場で、すんきをはじめ、野沢菜などの漬物や、瓶詰めの惣菜などを製造しています。毎年、10月半ばくらいになると、契約農家で収穫した赤かぶが持ち込まれ、すんき作りがスタート。同社で使っているのはほぼ開田蕪(かぶ)で、それを刻み、短時間加熱してから冷まして、種となる前年のすんきと交互に入れていきます。

「アルプス物産」の工場。例年、3〜4トンのすんきを生産している
すんきをはじめ、多彩な惣菜・漬物を製造・販売している

同社ですんきの製造を始めたのは10年ほど前。社長の原隆司さんは、「初年は50キロ作りましたが、そのときのことは鮮明に覚えています」と話します。聞けば、交互に入れたすんきを見て、均一にしたほうがいいと思い、かき混ぜてしまったとのこと。全て苦くなり、食べられなくなってしまったそうです。「従業員から『混ぜたらだめ』と言われていたのに、ついやってしまった。後で『だから言ったでしょ』と怒られました」(苦笑)。もちろん、それ以降は混ぜずに作っています。

アルプス物産株式会社 代表取締役 原隆司さん

まだまだ謎の多いすんきですが、味に作用する乳酸菌が4種類あることが分かってきました。「少しずつ解明されれば、味のコントロールができるようになるかもしれません。健康に良いものといっても、やはりおいしくないと続かないですから」と原さん。乳酸菌の配合比率で「おいしい味」を作り出すことが理想だと言います。

開田高原に向かう国道361号沿いある土産物・食事処「つけもの茶屋」

開田高原に向かう国道361号沿いには、同社が運営する土産物・食事処「つけもの茶屋」があります。季節限定で登場するすんきメニューは、かつおぶしと一緒にのせた「すんきそば」と、玉ねぎと鶏肉を入れて卵でとじた「すんき丼」。土産物には、すんきのほかにも10種類ほどの漬物を用意しています。

すんきと言えば冬ですが、同社は3年前に、細かく刻んだ「夏すんき」を発売。梅と合わせた「梅入り」もあり、食欲が低下する夏にさっぱりと食べやすく、そうめんやおにぎりの具材にするのもおすすめとのこと。そのほか、すんき入りギョーザの商品化も進行中です。「すんきは本当に奥深くて、こんなに素晴らしいものはほかにはありません。工夫して食べ方のバリエーションを増やすことで、もっと多くの人に親しまれるようにしていきたいですね」と原さんは力を込めます。


つけもの茶屋
TEL:0264-25-2121
住所:木曽郡木曽町新開黒川5086


⇒ 信州の伝統野菜「開田蕪」(「おいしい信州ふーど」図鑑)
⇒ 地理的表示(GI)「すんき」(「おいしい信州ふーど」図鑑)

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